キヨクタノシク

今泣いてないで歩いていこう 燃え尽きるまで

ドッグファイト / 個人的感想

ドッグファイトの初日12月8日から、年末の繁忙期と同時進行でわたしの現場通いが活発化された。そして、ぼやぼやクリエ通いをしていたらあっという間に年明けして、死闘のあけおめ、そして愛知千穐楽が終わった。一言「楽しかった」なんて感想では終わらすことのできないくらい考えさせられるストーリーだったし、演者のみなさんの表現を毎回新たに気づくことができて本当に面白かった。誠也くんの出番では「かわいい〜〜><♡♡」ってほぼだいたい思ってるけど、きちんとストーリーも楽しんだという事実をここに残しておく次第。

 

まず特筆すべきは、サウンドの良さ!!ダイナミックでかっこいい。そして、繊細で心に響く。サントラ(英語版)を聴いても飽きないし楽しい。多分今後も聞くたびにクリエに帰りたくなってしまうんだろうなあ。

もとい、出征を明日の朝に控えた若い兵士たちが、最後の遊びに街へと繰り出す。そのゲームドッグファイトのルールは「一番不細工な女の子を連れて来た者が勝ち」。そんな糞みたいなゲーム(汚い言葉で失敬)をする野郎どものことが憎らしい印象に残らないのはこの舞台の凄さでもあると思う。私自身、初演のとき「男って本当馬鹿だなあ」って思ったくらいで、今回も嫌悪感を抱いた人の感想は見なかった。でも普通あの手の内容だったら、そこでつまづいてしまっても仕方ないと思うんですけどね…だってほんと典型的なホモソーシャル海兵隊が女性に対して散々な扱いをするから。楽曲の「hey彼女」は歌も踊りも楽しいし、誠也くんの高音がめちゃ聴こえて最高なんですけど、オリジナルタイトルが「Hey,good lookin’」という衝撃。まさにオーマイガッシュ過ぎません?でもまあそれもこれも翌日の出征を控えた彼らの準備と脚本家はパンフレットで語ってるね。人をモノのように扱う戦争の準備…辛苦の時代(現代もそういう国があるのかも)だなあ。

ちなみに『ドッグファイト 』は、1963年と67年という時代設定なので、もちろん自分は生まれてないし、ましてやアメリカの話ということでいまいち背景のイメージも難しかった。けどきちんと帰還後のヒッピー文化は表現されていたし、海兵隊ベトナム帰還兵」に対しての扱いも歴史通りだった(事前に勉強しておいてよかった)。

話は戻るが、主人公のバードレイスはドッグファイトのルール通り、食堂で働く冴えない女の子ローズを口説いてパーティーへと連れ出すが、打ち解けるうち、彼女の内面に惹かれていくってのがこの舞台のメーンストーリー(バックは戦争と個人的に考えてる)。そしてこれも皮肉なのが、バードレイスがローズをパーティーに誘うときの曲「パーティーに行こう」をこれでもかってくらい甘い声で歌う屋良くん。そんな甘い声で「この目見て 傷つけないよ」って言われたら誰だって信じますやん!!!って爆発しそうになるくらい切ない…(後の展開を知ってるから)。その後のパーティー会場への道中でも、少し面倒な言い合いになった瞬間「君の唇素敵だね。口紅つけてるの?」とかいきなり褒め出して都合よく話変えたり、なーんかほんとオスだなって感じだった。

そんなこんなで海兵隊それぞれ(ギブス以外)見つけてきた女の子とバーに集まり、顔の判定が始まるわけだけど、hey彼女では女の子探ししてるのに、ドッグファイトの本番になぜギブスはいないの?ってのがすごい疑問だったんだよね。ギブス役をしていた木内さんはスティーヴンスの相手役オカマみたいな女子に扮するんだけど、もはやギブスには女装癖があって、ギブス=オカマちゃんなんじゃないかとも考えた(笑) でもそう考えるとスティーヴンスの“自惚れ屋”ってのがすごくハマる。自分が探してきた女の子を騙そうとしたけど、相手は本当は仲間のギブスでしたーってのがほんといじられキャラのスティーヴンスっぽい(笑)可哀想(笑)どんな風に演者さんが解釈していたかはわからないけど、ただ単にギブスだけ女の子を見つけられなかったで済ますのはもったい無い気がする。その後の売春宿にはギブスはいるしね。

そして売春宿と言えば、我らが誠也くんの演技が前半と後半で変わった。パンイチで出てくるときはデレデレのかわいい顔で^^次はバーンスタインってとこで売春婦のNOが出て、少し乱暴が起きて、バードレイスが「いい加減にしろ!」って怒鳴ったあと。12月中旬くらいまでは、バードレイスの態度が気に入らないような不貞腐れた顔をしていた印象だったけど、後半くらいから状況を把握して騒ぎを大きくしないでおこう的なキョトン顔でフェクターと顔を見合わす演技に変わってた。そもそもそう、なんでそこでスティーヴンスが不貞腐れるのかわたし的に理解が難しかったので変更してくれてスッキリした〜。

その後バードレイスがローズのお家にディナーを誘いに行くところだけど、ローズは謝罪に訪れたバードレイスに対してカフェの扉の前でずっと腕組みをしていた。レストランに行く途中でもしていたし、これはローズの防御本能というか相手の世界やペースに引きずり込まれないように構えているように見えた。橋の上のシーンでも自分のことを「孤独で、醜くて、肥っていて」って話すし、そういう自分のマイナス面を自覚しているからこそ男性に対して(ましてやチャラついた海兵隊に)は騙されないし、期待もしてない、と防御しているように感じた。そしてそれがエディに対してはふと解けていく瞬間がこのひとつの仕草で分かって面白かった。この腕組みは、ラストの帰還したバードレイスと再会したときにもローズはまたしていた。「待たないと決めた」という台詞の通り(けど絶対ローズはずっとバードレイスが好きだった)、彼女はなおも強がっている(自身を強く保っている)。それなのに、「仲間が死んだ」と聞いた瞬間に腕が緩むの。防御が緩むの。そして「おかえり」とともにバードレイスを抱きしめて、バードレイスがガチガチに属していたホモソーシャルの世界(海兵隊とか戦場とか)がここで解体されて新しい世界がこれから構築されるのかなーと。オリジナルサントラでは「welcome home」って台詞だから余計に帰って来たというよりも、新たな世界へって意味合いが強い気がした。

最後のシーンを先述しちゃったけど、大事な戦闘シーン。いやはや本当に短い。隊列してからすぐに切り替わっちゃうから見てる側の心の準備なんて一切無視(笑)でもあの緩急のある展開が戦争そのものを表現しているのかな。昨日は仲間と女の子と楽しんだけど、そんな現実一切関係なく一瞬にして世界は変わるし、人は死んじゃうし。人をモノのように扱え。銃で撃たれても平気。…ああ、本当怖いな。無知っていうか間違った教育って本当怖いなって思う。情報操作って言葉は現代にも染み付いているし、ちゃんと正しい情報を取捨選択できる環境で自分で在りたいと細々と思った。戦闘シーンも大阪と東京で演出が変わり、亡霊みたいに死んだ海兵隊がバードレイスを囲むんだけど、あそこの緊張感が凄い。屋良くんのマイクオフになってるけど、荒い呼吸が会場に響き渡るし、孤独感がなんとも切ない。その後のダーダーダーダーのギターが入るタイミングと、サンフランシスコ到着のタイミングが絶妙に最高過ぎて、我々観客もふっと引き戻された感覚だった。

 

あの後、バードレイスとローズが幸せに暮らせたかってのは正直わからないなあ(当時のベトナム帰還兵は恐ろしく疲弊していたみたいだし)。でも、フライヤーに書かれていた「少年から大人に」を感じれた部分はあった。ローズと一夜を過ごしたバードレイスが「お母さんが起きないうちに行くよ」の台詞の言い方。や、やさしい!あんなに威張ってたガキンチョが、大人になったんだなっていう自然な切り替えがさすが屋良くんだった。でもその後すぐにローズの住所のメモを破っちゃうからやっぱりガキンチョのままなのかもだけど(笑)「そんなもので体も心もあったまるか!」とボーランドにどやされてるわけだけど、どっちかというと「ゲームのルールを破った、不正をした」ボーランドの方が悪いはずなのに、彼らのルールでは「イケてない女の子に本気になっちゃった」方が格好悪いってこと?ええ〜〜ほんとなんなの男って糞だなあと改めて思った瞬間だった。

そして最後に書いておきたい。自分が女という立場だから故に理解し難かった部分も多数ある。でも自分が女だから故に超理解できた部分も沢山あった。ローズの「笑えるわ」で現実を受け止めようと歯をくいしばるとことか、「終わる前に」でもっと自分にも良いところあるんじゃないかがんばってみようと思うとことか、ほんと女子。エマちゃんの歌声も力強く繊細で、いつもエネルギーを貰っていた。

あの人がかっこよくてかわいくて歌がうまくて面白くて…そんな感想を書き始めたらキリがないのでひとまず下記にて自分の感想を締めることとする。

 

「面白い」そんな一言で終わらしたら駄目なんだろうけど、でもやっぱりドッグファイトは面白かった。戦争という重たい題材も含まれてるけど、その中に細かい笑いやコミカルなシーンを入れて人間の強さや優しさや、そして脆さに焦点が当てられた作品だった。

ありがとう!ドッグファイト

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